こんにちは!サラリーマン大家のむさしです。
不動産投資を始めると、避けて通れないのが売買契約です。
特に初心者の方にとっては、契約時に渡される書類の多さに圧倒され、「何をどう確認すればいいのかわからない・・・」となってしまうのではないでしょうか?
今回は、売買契約時に登場する書類の種類やその位置づけ、各書類で重点的にチェックすべきポイントを詳しく解説します。
契約に向けた事前準備や心構え、当日の注意点もお伝えするので、 「契約に対する漠然とした不安を解消したい!」という方はぜひ参考にしてください。
売買契約で登場する書類一覧
売買契約では、主には以下5つの書類が登場します。
1.売買契約書
2.重要事項説明書
3.物件状況報告書
4.共用設備表
5.その他関連資料(謄本、公図等)
どれも重要なものですが、特に売買契約書と重要事項説明書は、不動産取引の根幹となるため、念入りに確認する必要があります。
それぞれの書類について、簡単に解説します。
1. 売買契約書
売主と買主の間で正式に取り交わされる契約書です。
物件の詳細や売買条件、支払い方法、引き渡し時期などが記載されており、 これに基づいて取引が行われます。
2. 重要事項説明書
宅地建物取引士(宅建士)が、買主に対して物件の法的・物理的な情報を説明するための書類です。
3. 物件状況報告書
売主が物件の状態について自己申告する書類。
雨漏りやシロアリ被害、配管の漏水などの有無が記載されています。
4. 共用設備表
マンションやアパートの場合、共用設備に関する情報が記載されています。
特に給排水設備や修繕履歴などの項目はしっかり確認しましょう。
5. その他関連資料
登記簿謄本、公図、境界杭の位置など、物件の権利関係や位置などを示す資料です。
契約前の心構えと準備
各書類の解説に移る前に、契約に臨む前の心構えと準備について、少しだけお話しさせてください。
契約当日に焦らないためにも、この心構えと準備の仕方が特に大切となります。
特に、以下の点を意識しましょう。
契約書は3日前までに受け取る
大前提、契約書で取り交わされた内容が全て、という認識を持つことが必要です。
そのため、契約書類は遅くとも契約の3日前までに入手し、一言一句確認しましょう。
音読して確認するくらいがちょうど良いです。それくらい丁寧に確認しましょう。
特に、登記簿謄本の情報と契約書類の記載が一致しているか(物件所在地、面積、売主の氏名など)は確認しましょう。
不明点は遠慮せず仲介業者に質問する
「契約書に書かれていることがよく分からない…」という場合、 遠慮せず仲介業者に質問しましょう。
仲介手数料はそのためのサービス料でもあるので、 納得いくまで確認することが重要です。
交渉はすべきだが、売主との関係も意識する
契約内容に納得できない部分があれば交渉はすべきです。
ただし当たり前ですが、強引な要求をすると売主の心象を悪くし、せっかくの契約が破談になる可能性があります。
仲介業者に相談しつつ、「譲れない部分は主張しつつ、売主への配慮も忘れない」 というバランスを大切にしましょう。
各書類の確認ポイント
契約に臨むために必要なことを述べたところで。ここからは各書類の記載項目や特に確認すべき点について述べていきます。
売買契約書
売買契約書は、不動産取引の根幹となる非常に重要な書類です。
主に記載されている内容は以下の通りとなります。
売買契約書の記載項目
・取引条件
・物件価格と内訳
・物件の対象面積
・支払い時期・方法
・手付金の額、解除条件
・契約違反による解除・違約金
・融資特約(ローン特約、解除期限)
・権利関係・登記
・所有権等の移転の時期
・抵当権等の抹消
・所有権移転登記(費用負担等)
・物件の状態・引き渡し
・引き渡しの時期と条件
・引き渡し完了前の滅失・毀損
・設備の引き渡し
・費用負担・その他
・公租公課等の負担条件
・契約不適合責任
・その他特約(売主に有利な特約内容)
全ての項目にきちんと目を通すを必要がありますが、その中でも特に確認しておきたいことについては赤字で記しています。
それぞれ解説しますので、順番に見ていきましょう。
物件価格と内訳(建物・土地の価格配分)
売買契約書には、土地と建物の価格がどのように設定されているかが記載されます。
特に不動産投資においては、減価償却費の計算に影響を与えるため、建物価格の割合がどうなっているかは確認しましょう。
建物価格が高いほど減価償却費を大きく取ることができるので、節税効果を出すことができます。
しかし、建物価格が高すぎる場合、売却時に譲渡所得が増えたり、不自然な価格設定と判断されて税務調査の対象になる可能性があります(ただし、契約書に明確な内訳が記載されていれば、基本的にはその金額が税務上の基準となります)。
売主が課税事業者でない限り、建物価格を高く設定しても売主側にデメリットは基本的にありません。そのため、建物価格の比率が低い場合は、交渉の余地があります。
ただし、売主にとって特段のメリットがないうえ、税務調査のリスクを懸念して応じてもらえないケースもあります。
その場合は、価格の内訳を明示せずに総額のみを記載し、契約書の該当部分をブランクにする方法を提案すると、比較的受け入れられやすくなります。
融資特約(ローン特約、解除期限)
融資特約(「ローン特約」とも言われます)とは、融資審査に通らなかった場合に、契約を解除できる買主のための取り決めです。
融資を使って購入する場合には、最も重要な契約事項といっても過言ではありません。
この特約がないと、融資が通らなくても契約が有効となってしまい、違約金を支払うリスクが発生します。
契約解除の条件や期限、違約金の有無を確認し、自分に不利にならないよう注意が必要です。
なお、ローン特約の詳細については以下の記事にもまとめているますので、よろしければ参照ください。
・あえてローン特約を外す?ローン特約を使ってアパートの売買契約を優位に進めよう!
契約不適合責任(期間・対象)
契約不適合責任とは、売買後に発覚した物件の欠陥(雨漏り、シロアリ被害、設備の故障など)について、売主がどこまで責任を負うかを定めたものです。
補償期間や対応範囲が明記されているか、また修繕や賠償請求が可能かどうかを確認することが重要です。
なお、中古物件では「契約不適合責任を免責」とする特約を設けているケースも多いため、特に慎重にチェックしましょう。
ただし免責としていても、売主が物件状況について嘘の報告をしていたり、わざとでなくても重度の過失が認められれば、免責の特約は無効になります。
そのため、後述する重要事項説明書や物件状況報告書についてはきちんとに確認しましょう。
引き渡しの時期(引き渡し日、条件)
物件の引き渡し日がいつになっているかを必ず確認しましょう。
特に融資実行日までに間に合うかどうかが重要な確認ポイントです。
融資する銀行にもよりますが、通常は本審査から実行までに1カ月程度かかることが多いため、契約から引き渡しまでの期間が1カ月程度空いていると安心です。
また、2〜4月の繁忙期は入退居が頻繁に発生する時期でもあります。
そのため、契約後に退居が発生し、現況の実質利回りが変動する可能性も考慮しておく必要があります。
この点についてはコントロールが難しい部分ですが、あらかじめ想定しておくことで心構えができます。
その他特約(売主に有利な特約内容)
売買契約には、一般的な条項に加えて「特約事項」が設定されることがあります。
例えば、以下のような内容が特約として定められることが多くあります。
- 「売主は一切の契約不適合責任を負わない」
- 「本物件は現況有姿で引き渡すものとし、現況について買主は異議を述べない」
- 「将来、境界に関する争いが発生しても売主は関与しない」
これらは、買主にとって不利となる可能性が高い条項です。
また、特約と契約書の他の条項が矛盾する場合、一般的には特約が優先されます。
そのため、特約の内容が自分にとって不利でないかを十分に確認し、納得したうえで受け入れるのか、それとも売主と交渉するのかを慎重に判断しましょう。
なお、不明点があれば必ず仲介業者に確認・相談することが重要です。
2. 重要事項説明書
重要事項説明書は、契約前に宅建士が説明する内容です。
主な記載項目は以下の通りです。
重要事項説明書の記載項目
・物件情報
・物件の表示(所在地、種類、面積等)
・建物の構造・規模・新築年月
・権利関係
・登記情報(所有権、抵当権等)
・私道に関する負担(位置、負担内容)
・法令・制限
・法令上の制限(用途地域、建ぺい率等)
・ライフライン・設備
・飲用水・電気・ガス供給等の状況
・取引条件
・金額、引渡条件等(売買契約書に同じ)
・その他
・その他重要な事項(境界問題等)
売買契約書と内容が被るところもありますが、重要事項説明書では特に物件に関する情報や法令・権利関係が詳細に記載されています。
その中でも特に確認しておきたいポイントについて、以下の通り解説します。
所有権・登記情報の確認(謄本との一致)
まず大切なのは、売主がその物件の正当な所有者であるかどうかに加え、契約対象となる不動産の内容が登記簿謄本(登記事項証明書)の情報と一致しているかを確認することです。
具体的には、所有者名義だけでなく、土地や建物の面積、所在地、地目、種類などの基本情報が正確に反映されているかをチェックしましょう。
これらの情報が一致していないと、契約後に「聞いていた内容と違う」といったトラブルが発生する可能性があります。
また、土地については分筆されたものを購入するケースも多くありますので注意が必要です。
たとえば、2筆の土地にまたがって建物が建っている場合は、通常その両方が売買の対象となります。
しかし、一方の土地しか対象になっていなかったということが後から判明すると、大きな問題になりかねません。
そのため、分筆された土地の面積が正しく記載されているか、契約対象が本来売買すべき全体を含んでいるかを、登記簿と契約書を照らし合わせて慎重に確認するようにしましょう。
接道状況(再建築の可否)
次に、物件が法的に有効な道路にきちんと接しているかどうかも非常に重要です。
この確認が甘いと「再建築不可物件」を購入してしまうリスクがあります。
再建築不可の場合、将来の建て替えや増改築が制限され、資産価値が大きく下がる原因になります。
重要事項説明書には、接道している道路の幅員(道幅)、道路種別(公道か私道か)、接道長さなどが記載されているため、再建築に必要な条件(建築基準法上の接道義務:原則として幅4m以上の道路に2m以上接していること)を満たしているかを必ず確認しましょう。
3. 物件状況報告書
物件状況報告書は、物件の状態に関する売主からの自己申告書です。
主な記載項目は以下の通りです。
物件状況報告書の記載項目
・建物の不具合
・雨漏りの有無(過去・現在)
・シロアリ被害の有無
・建物構造上の不具合(傾き等)
・給排水管の漏水の有無
・設備の故障・不具合(給湯器等)
・土地・環境
・土壌汚染や地下埋設物の有無
・境界確認状況
・敷地の越境・隣地の越境
・心理的・社会的事項
・近隣トラブル(反社会的勢力等含む)
・心理的瑕疵(事故物件等)
・その他特記事項(売主が知る不具合)
赤字の箇所については物件購入に大きな影響を及ぼす項目となります。
これらの内容は物件調査時には判明しづらい項目です。
仮に物件報告書のこれらの記載がない、または曖昧な記載しかない場合は、売主側に必ず確認をとりましょう。
もし何かしら問題が見られるようであれば、場合によっては購入の見送りの判断が必要となるので、入念に確認しておくに越したことはありません。
4. 設備表
設備表には、物件に付帯する設備の一覧が記載されています。
主な記載内容は以下の通りです。
設備表の記載項目
・設備内容
・付帯設備一覧(エアコン、給湯器、ガスコンロ、照明器具等)
・共用設備
・共用設備(受水槽、浄化槽等)
・浄化槽・受水槽のメンテナンス状況
・引き渡し関係
・残置物の有無・引き渡し条件
・通信・インフラ
・テレビアンテナ、インターネット設備の有無と種類
・駐車・駐輪
・駐車場設備、駐輪場の有無
・その他特記事項
契約後に「こんなはずじゃなかった」とならないために、 物件調査で確認した内容と設備表の内容が一致しているかを入念に確認しましょう。
特に、水回りの状態(漏水の有無)、浄化槽や受水槽の点検履歴などをチェックすることが大切です。
まとめ
不動産の売買契約は、多くの書類が登場するため、 初心者にとっては不安や疑問が多い場面です。
だからこそ事前に契約書類をしっかり確認し、 必要な準備をしておくことが大事です。
✔ 契約書類は3日前までに受け取る
✔ わからないことは仲介業者に遠慮なく質問する
✔ 交渉はしつつも、売主との関係にも配慮する
この3つを意識し、ここまで述べてきた注意点を確認すれば、大きな失敗は防げるはずです。
ぜひ今回の記事を参考に、安心して契約に臨んでください!
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